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金沢地方裁判所 昭和46年(ワ)260号 判決

原告

高沢一夫

ほか一名

被告

山田菊次

ほか二名

主文

一  被告らは、原告高沢一夫に対し、各自金三、四一三、七四一円、同高沢愛子に対し、各自金三、一九六、三〇六円と右各金員に対する昭和四六年四月一六日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らの被告らに対するその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを三分し、その二を被告らの連帯負担とし、その余を原告らの負担とする。

四  この判決は、第一項にかぎり仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは、原告高沢一夫に対し、各自金四五〇万円、同高沢愛子に対し、各自金四三〇万円、と右各金員に対する昭和四六年四月一六日から支払ずみまで、年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  本件交通事故

(一) とき 昭和四六年四月一五日午後五時四〇分頃

(二) ところ 石川県羽咋市本江町カ四七番地国道一五九号線路上

(三) 加害車両 普通貨物乗用車(石五三六六号)

(四) 右運転者 被告 山田菊次

(五) 被害者 訴外亡高沢真吾

(六) 事故の態様 被告山田が加害車を運転して本件現場を進行中、同所を横断歩行中の被害者に衝突した。

(七) 事故の結果 被害者は右事故により右側頭骨、顔面骨、右大腿骨、各骨折の損傷を受け、事故後直ちに羽咋市中央町池野病院に運ばれたが既に死亡していた。

2  被告らの責任

(一) 被告山田

本件事故現場は見とおしのよい国道であり、被告山田は二四・五メートル手前から、被害者が歩行しているのを見ていたのであるから、自動車運転手としては、被害者の動静に注意しつつ、適宜警笛を鳴らしたり徐行したりして、事故の発生を未然に防止すべき注意義務があるのにこれを怠り漫然進行した過失により本件事故を惹起した。従つて民法七〇九条によりこれによる損害賠償義務を免れない。

(二) 被告沼田

被告沼田は被告山田を雇用するとともに加害車両を被告会社から借り受け、これをもつて自己の営む事業に従事させていたものであるから自賠法三条による運行供用者として、および民法七一五条による使用者として、右事故による損害賠償義務を免れない。

(三) 被告会社

(1) 被告会社は左のとおり自賠法三条による運行供用者として右事故に対する損害賠償責任がある。

(イ) 被告会社は加害車の所有者であり、被告沼田に別途販売した新車の納入が遅れたため新車の下取車である本件加害車に対し陸送用の仮ナンバーをつけ(加害車の車体検査期間がきれ使用できなくなるため)新車納入までの間、加害車を被告沼田に貸し与え使用させていたものであるから自賠法三条の運行供用者に該当する。

(ロ) かりにそうでないとしても、被告会社しか使用できない陸送用の仮ナンバーを下取車である本件加害車にとりつけたことは(それ自体違法行為である。)被告会社が被告沼田に対して自己名義による使用を許諾したことに他ならず、その場合許諾者としてその運行の指揮監督すべき責務を負い、かつその運行利益も被告会社に帰するから被告会社は自賠法三条の運行供用者に該当する。

(2) かりにそうでないとしても被告会社は民法七〇九条によつて右事故に対する損害賠償責任がある。すなわち前記のように被告会社には陸運局より陸送用の使途限定のもとに交付された仮ナンバーを被告沼田に交付し、車検がきれて使用できない本件加害車につけさせ、同車を使用させた違法行為がある。そしてこの被告会社の仮ナンバーをつけた加害車が本件事故を発生させたものであるから、被告会社は民法七〇九条によつて損害賠償責任がある。また被告会社が右仮ナンバーを被告沼田に交付することにより加害車が使用され、その結果事故の発生があることを予見することができるから、被告会社が仮ナンバーを被告沼田に交付した以上事故を未然に防止すべき義務を負い、この点からも民法七〇九条によつて損害賠償責任がある。

3  損害

(一) 亡高沢真吾の逸失利益

亡真吾は死亡当時満一〇年であり、従つて満一八才から六三才までの四五年間は就労可能であり、その間の平均月収は月五一、二〇〇円(労働省労働統計調査部発表の昭和四三年賃金センサス賃金構造基本統計調査)を下ることはない。そこで右収入のうち生活費その他の必要計費として四〇パーセントを控除し、年毎ホフマン式計算方法により年五分の割合による中間利息を控除して逸失利益を算出すると合計八、五六三、五〇七円となる。

(二) 相続

原告らは亡真吾の父母であり、亡真吾は原告らの長男である。原告らは亡真吾の死亡により法定相続分である各二分の一の割合により、亡真吾の右損害賠償請求権を相続した。したがつてその金額は各四、二八一、七五三円である。

(三) 原告高沢一夫の損害

(1) 治療費 一〇、六二二円

(2) 葬儀費用 三〇〇、〇〇〇円

(3) 慰藉料 一、五〇〇、〇〇〇円

(四) 原告高沢愛子の慰藉料 一、五〇〇、〇〇〇円

(五) 弁護士費用 原告ら各四〇〇、〇〇〇円

(六) 一部請求

右損害金のうち、原告高沢一夫は金四、五〇〇、〇〇〇円、原告高沢愛子は金四三〇、〇〇〇円を請求する。

4  むすび

よつて被告らに対し、原告高沢一夫は金四、五〇〇、〇〇〇円、原告高沢愛子は金四、三〇〇、〇〇〇円と右各金員に対する本件不法行為の翌日である昭和四六年四月一六日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

(被告山田)

1 請求原因1(一)ないし(七)までの事実は認める。

(ただし(七)の事実のうち正確な損傷名は知らない。)

2 同2(一)の事実は否認する。

3 同3の事実のうち(二)の事実は認めるが、その余の事実は知らない。

(被告沼田)

1 請求原因1(一)ないし(五)および(七)の事実は認める。

2 同2(一)の事実は否認する。同(二)の事実は認める。

3 同3のうち(二)の事実は認める。その余の事実は否認する。

(被告会社)

1 請求原因1の事実は全部知らない。

2 同2(三)のうち、被告会社が被告沼田に新車を販売し、本件加害車を下取車として引取る話合いが進んでいたこと、被告会社が加害車に仮ナンバーをつけた事実は認めるがその余の事実は否認する。

3 同3の事実は全部知らない。

なお同(一)の逸失利益の計算において、被害者は当時満一〇才であつたからその養育費を控除すべきである。

三  抗弁

(被告沼田、同山田)

1  被告山田は無過失である。本件事故は被害者の過失によつて発生した。

(1) 被告山田が国道一五九号線をセンターラインよりやや左寄りに時速約五五キロメートルで事故現場付近を進行していたとき、同一方向に向つて左側広場から国道左側を被害者が道路右寄りに、これよりやや遅れて左寄りに被害者の姉道代が歩いていたが、そのうち被害者が小走りに数歩走り始め、突然道路中央に右折して飛出したので被告山田はとつさにハンバルを右に切り急停車の措置をとつたが間に合わず衝突したものである。

(2) 被害者の走り出た個所は横断歩道でもなく、かつ横断せんとした向い側は国道よりやや低い水田であり、通常かかる場所で子供が突然走り出して右折するということは異例のことで被告山田には予見可能性がない。

(3) 国道上を自動車で走行する場合、道路わきの歩行者がいつ進行先へ飛び出すかわからないということで徐行運行したり或いは警笛を鳴らしたりして進行していてはかえつて他の追突などの事故の誘因となり国道輸送の目的にも添わない。被告山田にはかかる義務を負担しない。

2  かりに免責が認められないとしても、被害者には前記のような過失があるので本件事故の損害賠償額の算定につき斟酌されるべきである。

(被告会社)

被告会社には、自賠法三条にいう運行供用者ではなく本件事故に対する責任はない。すなわち被告会社は、本件加害車を被告沼田から下取車として現実に引取つておらず、しかも加害車を現実に運行していたのは被告沼田の従業員の被告山田である。そして右山田は使用者である右沼田の指示に従い、右沼田の業務を遂行中であつたものである。そしてガソリンも右沼田の負担で消費していたものである。従つて被告会社はたとえ加害車に仮ナンバーを付したからといつて、同車に具体的に指示権を有せず、従つて運行支配権がない。また当時の運行も専ら右沼田の利益のために行なつていたものであるから運行利益もない。また、加害車に仮ナンバーを使用させたことが直ちに不法行為の要件となる過失を構成するものではない。被告会社には不法行為責任もない。

四  抗弁に対する認否

全部否認する。

第三証拠〔略〕

理由

一  本件交通事故の内容

〔証拠略〕を合わせ考えると、本件交通事故の内容は次のようなものであつたことが認められる。(但し被告山田との間では請求原因第一項(一)から(六)までの事実は争いがない。被告沼田との間では同第一項(一)から(五)までの事実および(七)の事実は争いがなく、同項(六)の事実は明らかに争わないからこれを自白したものとみなす。)

(一)  本件事故現場は、河北郡津幡町から七尾市に南北にのびる羽咋市本江町カ四七番地先の国道一五九号線上で、右道路は歩車道の区別がなく、コンクリートで舗装された有効幅員六・〇メートルの平坦な路面である。現場付近は約二〇〇メートルにわたり直線で見通しはきわめて良好である。なお現場付近には横断歩道はない。また事故当時現場付近を進行していた車はなかつた。

(二)  被告山田菊次は、昭和四六年四月一五日午後五時三〇分頃加害車(幅約一・七メートル)を運転して、本件国道を鹿島町方面から飯山町方面に向けて時速約五五キロメートルで進行中、事故現場から約一三〇メートル北方の地点で自車の約一二〇メートル前方の道路左側空地に人影を認め、更に事故現場から約五〇メートル北方の地点まで進行したときに、その人影が自車の約四〇メートル前方の道路左端を事故車と同一方向に向けて歩行中の被害者(当時一〇年)と被害者の姉訴外高沢道代(当時一三年)の二人であることを認めたが、被害者らが道路を横断することはないと判断して警音器も吹鳴せずそのまま前記速度で進行を続けたところ自車の前方約八メートルの地点から被害者が道路を横断しようとして斜め前方に向つて小走りに飛び出してきたのを認め、ハンドルを右に切つたが、問に合わず自車左前部を被害者に衝突させたため被害者は左側頭骨、顔面骨、右大腿骨各骨折の損傷をうけ即時同所において死亡した。かような事実を認めることができ、ほかに右事実を動かすに足る証拠はない。

二  被告らの責任

(一)  被告山田

右認定事実によれば被告山田としては被害者を発見した際、事前に警音器を鳴らして自車の接近を被害者に知らせるとか、被害者に接近した際徐行するなどの措置をとつていれば本件事故を回避できたこと明らかであるのに、同被告においてそれらの方法をとらず被害者が横断することはないと軽信し、漫然進行した過失があるものといえる。なおつけ加えると、被告山田は被害者の走り出た個所は横断個所でなく、かつ横断せんとした向い側は事件国道よりやや低い水田であり通常かかる個所で、子供が走り出して横断することは予見できないから無過失である旨主張するが、前記認定によれば本件現場付近には横断歩道はなく、また被告山田において被害者が子供であることを認識していたものであるから、被害者の横断は全く予見されないとはいいがたく、右主張は理由がない。また同被告は、国道上を自動車で走行する場合、道路わきの走行者がいつ進行先へ飛び出すかわからないということで徐行したり警音器を鳴らしたりして進行していてはかえつて他の事故の誘因ともなりかねず、かかる義務を認めるべきでないと主張するが、この点は過失相殺または損害賠償額をきめる場合の斟酌事由として考慮するのはともかく、この一事をもつて前述のような本件事情において同被告の結果回避のために適切な措置をとる義務を消滅させるものではない。

(二)  被告沼田

被告沼田は本件事故当時、加害車の所有者と認められ(理由は後述)、また同被告が被告山田を雇用するとともに、加害車をもつて自己の営む事業に従事させていたこと、および本件事故が同業務に従事中のものであることは当事者間に争いのないところであるから、被告沼田は自賠法三条による運行供用者責任または民法七一五条による使用者責任をまぬがれない。

(三)  被告会社

(1)  被告会社が被告沼田と新車の販売契約をした事実、および被告会社が加害車に陸送用の仮ナンバー(回送運行許可番号標。以下仮ナンバーと略称する。)を取りつけた事実は当事者間に争いがなく、右争いのない事実と、〔証拠略〕を考え合わせると、以下の事実が認定できる。

すなわち昭和四六年四月二日に被告会社と被告沼田との間で、被告会社が被告沼田にトヨタダイアナ一台を販売すること、その際当時被告沼田所有の加害車を被告会社が下取りに引取ることという売買契約が成立し、新車納入期日は同年四月一三日と定められた〔証拠略〕。ところが、被告会社において右納期までに納入できなくなつたので四月一三日に、被告沼田に連絡したところ、同人から加害車の車検期間が同月一四日に切れるという事情を聞き、同社が石川県陸運事務所より交付を受けていた仮ナンバーを加害車に取りつけて新車納入まで加害車を使用して欲しいと申入れ、被告沼田においてもそれを了解し、同日被告会社の方で加害車に仮ナンバーを取りつけるとともに仮ナンバーの車検証と保険証を被告沼田に渡した。なおそのとき被告会社係員から被告沼田に対し「事故を起さないように」という旨の申入れがなされた。そして本件事故当時、加害車は右仮ナンバーをつけて運行していたものである。かような事実を認めることができ、ほかに右認定をうごかすに足る証拠はない。

(2)  ところで、被告会社の責任を判断するにあたつて、本件についてはまず、事故当時の加害車の所有権の帰属が問題とされるところ、右認定事実によれば、被告沼田が被告会社に対し、本件加害車を下取車として引渡し、あらたに被告会社から新車を購入することを内容とする売買契約は成立していたものの、相互に現実の引渡しがなされていない状況であつたこと、および、自動車の売買については、特約のないかぎり現実の引渡しをもつて所有権移転時期とする業界の慣行〔証拠略〕であつたことなどを考慮すると、本件事故当時の加害車の所有権は被告沼田にあつたと認定するのが相当である。したがつて、被告会社が加害車を所有していることを前提とする原告の主張は採用できない。

(3)  つぎに、前記認定事実によると、本件加害車は事故前に車体検査期間が徒過し、車両として運行の用に供しえなくなつたものを新車が納入されるまでの短期間にかぎり被告会社において仮ナンバーをとりつけ、被告沼田においてこれを使用していたものである。ところで、右の仮ナンバー標は、陸運事務所が特定の者に対し、許可し、これを交付しているもので、かつその使用目的も回送運行等に限定されていることは道路運送車両法の規定によつて明白なところである。したがつて被告会社がこれを本件加害車にとりつけたことは、本来車両として運行できず、また仮ナンバーの交付、使用資格もない被告沼田に対し、あらたに被告会社の責任において期間を限定し、運行の資格をあたえたものにほかならない。換言すれば、被告会社は、被告沼田に対し、被告会社のみがもつ運行資格を濫用し被告沼田にこれをあたえることによつて本件加害車を運行の用に供させたものであるから、この運行に関し、被告会社の責任において支配管理を及ぼしうべき立場にたち、かつその責務を負う地位にあつたものというべきであり、さらに右仮ナンバーを使用させたことは、被告会社にとつて当初の新車引渡期日に約定どおりこれを履行しなかつたことに対する被告沼田からの損害の請求の回避、ひいては新車売買による利益の確保など、業務上の利益をうることを目的として運行許諾(仮ナンバー使用許諾)をあたえたものであること明白であり、かような被告会社の本件加害車に対する運行支配および運行利益の態様を合わせ考えると、被告会社において運行供用者責任をまぬがれないものというべきである。

なおつけ加えると、被告会社は本件加害車(下取車)の引渡しをうけていないことを理由に責任のないことを主張するがここにいう引渡しとは車両として運行の用に供しうべき資格がある車両であること(自動車検査証の存在)を前提とし、その移転にともなう責任の帰属が問題とされるものであるところ、本件加害車は車体検査期間が徒過し、車両として運行の用に供しえないものについて前示のとおりあらたに被告会社の責任において被告沼田に対し、その専有する運行資格をあたえたものであり、引渡しの有無と別個にその責任を判断さるべきものである。

三  亡高沢真吾の過失

ところで前記一、(一)、(二)認定の事実によると、被害者は本件事故現場付近の道路左端を訴外高沢道代と歩いていたが、事故車の前方約八メートルの地点から道路を斜めに小走りで横断を始め、約一・七メートル進んだ本件事故現場において進行してきた加害車と衝突したもので、被害者において、右横断にあたり左右の安全を確認すれば当然加害車に気づいたのにかかわらず右注意義務を怠つた結果本件事故を招来したものというべくこの点において、本件事故の発生について被害者の過失も相当程度考慮すべきところ、その割合は被害者の年齢、事故当時の道路状況、被告山田の回避可能性の度合、その他本件事故の態様を考え合わせると三〇パーセントと認定するのが相当である。

四  損害

(一)  亡高沢真吾の逸失利益

〔証拠略〕を合わせ考えると、亡真吾は昭和三五年四月二五日(事故当時満一〇年)生で事故当時余喜小学校五年であつたことが認められる。従つて今後少なくとも四五年間は就労可能であつたものと認められる。そこで同人の生活費その他の必要経費を五〇パーセントとみて労働省労働統計調査部発表の昭和四六年賃金センサス賃金構造基本統計調査第一巻第一表全産業男子労働者企業規模計一八―一九才の平均賃金、きまつて支給する現金給与額(一カ月四三、七〇〇円)一二カ月分に年間賞与その他の特別給与額(六二、六〇〇円)を合算して算出された年収額(五八七、〇〇〇円)を基礎に右必要諸経費を控除し、ホフマン式計算法により年五分の割合による中間利息を控除して逸失利益現価額を算出すると合計金五、五六〇、八七四円となる(なお養育費支払義務者と損害賠償請求権者とはその主体を異にするから、亡真吾の逸失利益の算定にあたり養育費を控除するのは相当でない。)。

(二)  相続

〔証拠略〕を合わせ考えると原告らは亡真吾の父母であり、亡真吾は原告らの長男であることが認められる。従つて原告らは、亡真吾の死亡により法定相続分である各二分の一の割合により、亡真吾の前記損害賠償請求権を相続したものというべく、その金額は各二、七八〇、四三七円となる。

(三)  原告らの損害

〔証拠略〕を合わせ考えると、原告高沢一夫は亡真吾の治療費一〇、六二二円、葬儀費用三〇〇、〇〇〇円を支出したことが認められる。また原告らの慰謝料については原告らと亡真吾の身分関係、本件事故の態様その他諸般の事情を考慮し、各一、五〇〇、〇〇〇円を相当と認める。

(四)  過失相殺

本件事故については、亡真吾に前述のような過失が認められ、これは被害者側の過失として本件損害額の認定にあたり斟酌すべきであるから、右過失割合に応じて請求しうべき金額を算出すると、原告高沢一夫は三、二一三、七四一円、同愛子は二、九九六、三〇六円となる。

(五)  弁護士費用

原告らが原告訴訟代理人に委任して本件訴訟を遂行したことによる弁護士費用は、本件事故と相当因果関係にたつ損害と認められるところ、その額については本件訴訟の認容額、請求額、その他本件訴訟の一切の事情を合わせ考え、原告らについて各金二〇〇、〇〇〇円を相当と認める。

五  むすび

してみると、原告らの本訴請求は、被告らに対し原告高沢一夫において金三、四一三、七四一円、同高沢愛子において金三、一九六、三〇六円と右各金員に対する本件不法行為の翌日である昭和四六年四月一六日から支払ずみまで、民法所定の年五分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める限度において理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法八九条、九二条、九三条一項但書を、仮執行の宣言について同法一九六条をそれぞれ適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 加藤義則)

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